「JICA海外協力隊」では、自分が持つ技術・知識・経験を生かし、現地の人々と一緒に世界各国の課題に挑戦しています。2011年にコロンビアへ派遣された橘佳祐さん(36歳)に、活動の様子や思いについて聞きました。
コロンビアの子ども達に野球を指導
教えるより教わることが多かった
「JICA海外協力隊」として、2 0 1 1 年から2 年間、南米のコロンビア共和国へ赴任した橘佳祐さん。 日本体育大学の在学中、先輩の紹介で野球選手権大会のスタッフとしてエクアドルに短期派遣されたことが、JICA海外協力隊との出会いです。
卒業後は保健体育の教師になり野球を指導するという目標がありましたが、「経験値を積んでから指導に携わってはどうか」という大学の先生のアドバイスもあり、JICA海外協力隊に参加することにしました。
スペイン語など2カ月間の研修を経て、子ども達に野球を教える野球隊員として、コロンビアでの活動がスタートしました。
赴任先のカリ県では野球連盟に所属し、4歳〜18歳の子ども達に、平日は午後から、週末は朝から野球を教えました。「最初の1年は、思うように言いたいことが伝えられず苦労しました。言葉が多少間違っていても積極的に話してみると、次第に思いが伝わり現地の人々との関係も深められることに気付きました。行動することの大切さを知り、スペイン語の上達にもつながりました」と橘さん。
コロンビアの子ども達は、練習よりも試合が好きで、実践することで成長していきます。練習の成果を試合につなげるという日本のやり方だけではないことを、学んだそうです。「赴任中は、子ども達やその親御さん、現地でお世話になった家族から、教わることの方が多かったです。それらの経験は、大変なことがあっても乗り越えられるという力になりました」
草むしりや石やゴミを取り除くなどのグラウンドづくりから始めました。泥だらけになってしまったボールを丁寧に洗い、スコアボードや練習道具を手づくりするなどの苦労を、子ども達や家族と積み重ね、試合ができるまでに成長
コロンビアの経験とスペイン語力で
プロ野球の通訳に携わる
開発途上国の治安について心配する声もありますが、「現地での生活をきめ細かにアドバイスしてくれる、JICAのサポートが心強かった」とも話してくれました。
帰国後は東日本大震災の復興支援員、保健体育教員などを経て、2016年から阪神タイガース球団本部でチーム運営に携わり、現在はヨハン・ミエセス選手の通訳を担当しています。
「コロンビアでの経験を生かし、選手がよい結果を出せるように、生活面でのサポートも含め環境づくりに努めるよう心がけています。海外協力隊での経験が、今の自分の生き方につながっているという橘さん。
「世界に出ると、言葉も文化も違う様々な人との出会いがあります。興味を持ったら、自分の経験値を上げるための一歩を踏み出すことも選択肢の一つです。私自身、国際協力や支援にも参加していきたいと考えます」と、思いを聞かせてくれました。
「独立行政法人国際協力機構=JICA」とは
日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行なっている機関。JICA海外協力隊については、これまでに幅広い分野で99カ国に5万人以上を派遣しています。
派遣までのプロセスは?
応募登録はWEBで。一次選考(書類審査)で、人物、健康、語学力、技術などを審査。合格者はJICAが指定会場で実施する二次選考(面接)を経て、合否が決定。
その後、約70日間の合宿制の「派遣前訓練」へ。異文化の相互理解や、赴任国での活動に必要な知識や技能を講座、演習形式で学びます。
JICA関西
℡078・261・0352
神戸市中央区脇浜海岸通1-5-2
https://www.jica.go.jp/kansai/index.html
W-Style 2024.3月掲載